仏教宗派の違いを一覧で比較!初心者にも分かりやすく解説

法事やお墓参りは身近なはずなのに、仏教の宗派について、私たちは意外と知らないことが多いです。

この記事では、そんな漠然とした疑問を解消します。

 

数ある仏教宗派の違いを、歴史的な背景から分かりやすく解き明かします。

この記事を読むことで、お寺や仏像を見る目が変わり、ご先祖様との繋がりを、より深く感じられるようになるでしょう。

 

▼この記事でわかること

  • 仏教宗派が日本で多くに分かれた歴史的な理由
  • 主要な8つの宗派の具体的な教えとご本尊の違い
  • お寺巡りがもっと楽しくなる宗派の見分け方
  • 自分の家の宗派を調べるためのヒント

 

そもそも仏教の宗派はなぜ分かれたの?

仏教はもともと、約2500年前にインドで生まれたお釈迦様の教えです。

それが一つのはずなのに、なぜ日本にはたくさんの宗派があるのでしょうか。

その背景には、長い歴史と教えの解釈の違いがありました。

お釈迦様の教えと時代の変化

お釈迦様が亡くなった後、弟子たちはその教えを後世に伝えようとしました。

しかし、受け取る人や時代が違えば、教えの解釈も少しずつ変わっていきます。

特に仏教が中国を経て日本に伝わる過程で、その土地の文化や人々の願いと結びつきました。

「すべての人を救いたい」と願う僧侶たちが、それぞれの時代で民衆の心に寄り添う形で新しい宗派を確立していったのです。

日本仏教の代表的な13宗56派

現在、日本の伝統的な仏教は、大きく分けて13宗56派あると言われます。

奈良時代に伝わった南都六宗にはじまり、平安時代には最澄が開いた天台宗や、空海が開いた真言宗が誕生しました。

鎌倉時代になると、法然、親鸞、日蓮、道元といった、歴史の教科書でもおなじみの僧侶たちが、次々と新しい宗派を開きました。

これが現在の日本の仏教宗派の、大まかなルーツとなっています。

【宗派マップ】まずは2つの大きな流れを知ろう

13宗もあると聞くと、少し難しく感じるかもしれません。

しかし、教えの根本的な考え方で分けると、大きく2つの流れが見えてきます。

この大きな違いを理解するだけで、宗派マップの全体像がグッと掴みやすくなります。

自力本願と他力本願の違い

一つ目の流れは「自力本願(じりきほんがん)」です。

これは、厳しい修行や瞑想によって、自らの力で悟りを目指す考え方になります。

禅宗系の臨済宗や曹洞宗が、この代表格と言えるでしょう。

もう一つは「他力本願(たりきほんがん)」です。

これは、阿弥陀如来などの仏様の力を信じ、その救いによって極楽浄土へ導いてもらう考え方です。

浄土宗や浄土真宗が、こちらの流れをくんでいます。

自分の力で頑張るのか、仏様の力にお任せするのか。

この違いが、宗派ごとの教えの根幹をなしているのです。

ご本尊や有名なお寺で見る宗派

宗派ごとの違いは、お祀りしている「ご本尊(ごほんぞん)」にも表れます。

ご本尊とは、そのお寺の中心となる仏様のことです。

例えば、奈良の大仏様として有名な東大寺のご本尊は、華厳宗の盧舎那仏(るしゃなぶつ)です。

また、真言宗の総本山である高野山金剛峯寺や、天台宗の総本山である比叡山延暦寺など、お寺の名前で宗派を推測することもできます。

旅先でお寺に立ち寄った際に、「ここのご本尊はどなただろう?」と調べてみると、宗派の理解がより深まるかもしれません。

仏教宗派の違いを一覧で比較!代表8宗派の特徴

仏教宗派の違い

それでは、ここから日本の代表的な8つの宗派について、具体的な違いを一覧で見ていきましょう。

それぞれの宗派の開祖(創始者)や、総本山(中心となるお寺)、教えの特徴などを比較します。

 

宗派名 開祖 ご本尊 (代表例) 主な教え・特徴 主に唱える言葉 有名なお寺
天台宗 最澄 定めなし (釈迦如来など) 誰もが仏になれる性質を持つという「法華経」の教えが中心。総合的な仏教。 南無阿弥陀仏など
比叡山延暦寺 (滋賀)
真言宗 空海 大日如来 厳しい修行により、この身のままで仏になる「即身成仏」を目指す密教。 南無大師遍照金剛
高野山金剛峯寺 (和歌山)
浄土宗 法然 阿弥陀如来 ひたすら念仏「南無阿弥陀仏」を唱えることで、極楽浄土へ往生できる。 南無阿弥陀仏 知恩院 (京都)
浄土真宗 親鸞 阿弥陀如来 阿弥陀仏の力を信じる心だけで救われる(悪人正機)。念仏は感謝の表現。 南無阿弥陀仏
西本願寺・東本願寺 (京都)
臨済宗 栄西 釈迦如来 師との問答(公案)を通じて、自らの力で悟りを開くことを目指す「禅宗」。 (特定の言葉なし)
建仁寺、龍安寺 (京都)
曹洞宗 道元 釈迦如来 ただひたすら壁に向かって坐禅する「只管打坐」。坐禅そのものが悟りの姿。 (特定の言葉なし)
永平寺 (福井)、總持寺 (神奈川)
日蓮宗 日蓮 (大曼荼羅) 「法華経」こそが最高の教え。題目の「南無妙法蓮華経」を唱える。 南無妙法蓮華経 久遠寺 (山梨)
時宗 一遍 阿弥陀如来 「踊念仏」で知られる。全国を遊行し、人々に念仏札を配った。 南無阿弥陀仏
清浄光寺 (神奈川)

 

天台宗・真言宗(平安二宗)

天台宗と真言宗は、平安時代に最澄と空海が中国から持ち帰った教えです。

天台宗はあらゆる教えを大切にする総合的なスタイルで、後の鎌倉仏教に多くの影響を与えました。

一方、真言宗は「密教」と呼ばれ、神秘的な儀式や修行を重んじるのが特徴です。

浄土宗・浄土真宗・時宗(浄土系)

鎌倉時代に生まれたこれらの宗派は、「南無阿弥陀仏」という念仏を拠り所にします。

浄土宗は、念仏を何度も唱えることを重視します。

浄土真宗は、唱える回数よりも信じる心が大切だと説きました。

時宗は、一遍上人が全国を巡りながら、踊りとともに念仏を広めたことで知られています。

臨済宗・曹洞宗(禅宗系)

同じ禅宗でも、臨済宗と曹洞宗ではスタイルが異なります。

臨済宗は、師から与えられる禅問答を解くことで悟りを目指します。

一方の曹洞宗は、ただひたすらに坐禅に打ち込むことを大切にして、その姿こそが悟りだと考えました。

意外と身近?葬儀や考え方で見る宗派の違い

宗派の違いは、実は私たちの生活の中に溶け込んでいます。

特に葬儀の作法には、それぞれの教えが色濃く反映されています。

お経や数珠の持ち方の違い

法事で「お経のリズムが違う」と感じた体験は、まさに宗派による違いの表れです。

例えば、真言宗では独特の節回しで、日蓮宗では木柾(もくしょう)という仏具を叩きながら、力強くお経を唱えることがあります。

また、お焼香の回数や、数珠の持ち方、形にも宗派ごとの作法が存在します。

これらは故人を供養する気持ちの表し方の違いであり、どれが正しいというわけではありません。

「南無阿弥陀仏」と「南無妙法蓮華経」

よく耳にするこの2つの言葉も、宗派を代表する大切な念仏・題目です。

「南無阿弥陀仏」は、「阿分かりやすく弥陀仏に帰依します」という意味で、浄土宗や浄土真宗などで唱えられます。

一方、「南無妙法蓮華経」は、「法華経の教えに帰依します」という意味で、日蓮宗で唱えられる題目です。

どちらも仏様の教えを信じ、拠り所にするという点で共通しています。

まとめ:仏教宗派の違いを分かりやすく一覧で比較

ここまで、仏教宗派の違いについて、初心者にも分かりやすく解説してきました。

多くの宗派があるのは、それだけ多くの人々を救おうとした、僧侶たちの慈悲の心の表れでもあります。

一覧で比較してみると、それぞれの教えに魅力があることに気づきます。

宗派の違いを知ることは、単なる知識を得るだけではありません。

日本の歴史や文化への理解を深め、ご先祖様が大切にしてきた思いに、心を寄せるきっかけになります。

そしてそれは、巡り巡って自分自身のルーツを知るための、大切な第一歩となるはずです。