
以前の職場に、 どうしても苦手な人がいました。
この苦しい人間関係から逃れるには、 自分がこの場から去り、 縁を切るしかない。
そう本気で思い詰めていました。
もう、 縁を切ってしまいたい。
そう最終決断を下す前に、 ほんの少しだけ、 仏教の教えに耳を傾けてみませんか。
相手を変えようとするのではありません。
仏教の教えから自分の「見方」をほんの少し変えるだけで、 心が驚くほど楽になる方法があるのです。
▼この記事でわかること
- 「苦手な人」が生まれてしまう心の仕組み
- 縁を切らずに関係を楽にする仏教の3つの視点
- 相手と心の距離を置くための具体的な実践法
- 執着から解放され、穏やかな心を取り戻すヒント
目次
「あの人さえいなければ…」悩みの根源は相手か、自分か
「あの人の、あの言い方さえなければ」 「あの人の、あの態度さえなければ」
私たちは、 人間関係がうまくいかない原因を、 すべて相手のせいにしてしまいがちです。
もちろん、 相手に原因があることも多いでしょう。
しかし仏教では、 苦しみの根本は自分の心の外側ではなく、 内側にあると考えます。
他人を変えることはできないという大原則
まず受け入れなければならないのは、 他人を自分の都合の良いように変えることは、 不可能に近いという事実です。
相手の性格や価値観は、 その人が何十年という歳月をかけて、 作り上げてきたもの。
それを、 こちら側の「こうあってほしい」という願いで、 コントロールしようとすれば、 そこに新たな苦しみが生まれます。
「変わってほしい」と願うほど、 変わらない相手に苛立ち、 悩みは深くなるばかりでしょう。
自分の心を映し出す「鏡」としての存在
仏教には、 他人は自分の心を映す「鏡」である、 という見方があります。
相手の言動に、 なぜ自分はこれほど心が乱されるのか。
もしかすると、 相手の姿を通して、 自分が目を背けている弱さや、 認めたくない部分を見ているのかもしれません。
例えば、 相手の攻撃的な態度に強く腹が立つのは、 自分の中に眠る、 攻撃性を刺激されるから、 という可能性もあります。
相手は、 自分の心に波紋を立てる、 きっかけに過ぎないのです。
縁を切る前に試したい、心が楽になる仏教の教え
相手を変えることはできない。 では、 どうすればこの苦しみから逃れられるのでしょうか。
仏教には、 自分の「見方」を変えることで、 状況を好転させるための、 たくさんの知恵があります。
ここでは特に人間関係に応用できる、 3つの教えを紹介します。
課題の分離:悩みを切り分ける見方
これは、 自分の課題と、 相手の課題を、 心の中ではっきりと切り分ける考え方です。
例えば、 相手がいつも不機嫌な顔をしているとします。
それを見て、 「私が何か悪いことをしただろうか」と、 不安になる必要はありません。
不機嫌でいるかどうかは、 あくまで「相手の課題」です。
それに対して、 こちらがどう考え、 どう振る舞うかが「自分の課題」になります。
「あの人は今、機嫌が悪いのだな。でも、それはあの人の問題だ」
そう心の中で境界線を引くだけで、 相手の感情に振り回されることが、 格段に少なくなります。
縁起:すべての物事は繋がっている
「縁起(えんぎ)」とは、 この世の全ての物事は、 様々な原因や条件が繋がり合って、 成り立っているという教えです。
目の前の苦手な人も、 その人がそうなった、 数えきれないほどの背景や原因があるはずです。
その人が育った環境、 受けてきた教育、 過去のつらい経験。
そういった無数の「縁」が複雑に絡み合い、 今のその人が形成されています。
そう想像すると、 「ただ、そういう事情の人なのだ」と、 少しだけ客観的に、 相手を捉えることができるかもしれません。
慈悲:あえて相手の幸せを願ってみる
これは、 最も難しく、 しかし最も効果的な心の持ち方かもしれません。
「慈悲(じひ)」とは、 他者の幸せを願い、 苦しみを取り除きたいと考える心です。
「あんな人の幸せなんて願えるわけがない」 そう思う気持ちは、 とてもよく分かります。
ですが、 試しにこう考えてみてください。
「もしあの人が、心からの幸福で満たされていたなら、 あんな風に他人に意地悪な態度は取らないだろう」と。
人は、 自分が満たされていないからこそ、 他者を攻撃してしまうことがあります。
相手の幸せをのは難しいものです。
ここでは、 もっと簡単に、 相手と願うことは、 巡り巡って、 相手が自分を攻撃する必要性をなくすこと。
そして何より、 人の幸せを願っている間、 自分の心は不思議と穏やかになるのです。
明日からできる「心の距離」を保つ具体的な方法
仏教の教えを、 すぐに実践する「心の距離」を保つための、 具体的な方法を2つ紹介します。
心の中で「実況中継」をしてみる
相手から嫌なことを言われたら、 感情で反応する前に、 心の中で、 テレビのアナウンサーのように実況してみてください。
「おっと、〇〇さん、またいつもの嫌味を言い始めました」 「眉間にしわが寄り、声のトーンも少し低めです」
このように一歩引いて自分と相手を客観視すると、 怒りや悲しみの渦に、 巻き込まれにくくなります。
バカバカしいと思うかもしれませんが、 冷静さを取り戻すのに、 とても効果的な方法です。
相手への「期待」という重荷を下ろす
私たちが苦しむ大きな原因の一つに、 相手への「期待」があります。
「優しくしてくれるはず」 「正当に評価してくれるはず」
その期待が裏切られるから、 私たちは傷つき、 腹を立てるのです。
初めから、 相手に何も期待しない。
「あの人は、そういう人なのだから」と、 良い意味で諦めてしまう。
期待値をゼロにしておけば、 相手が何をしても、 心が大きく揺さぶられることはありません。
たまに普通の対応をされただけで、 「今日は穏やかだな」と、 少しだけ得した気分にさえなれるでしょう。
まとめ:仏教の教えで人間関係が楽に!「苦手な人」と縁を切る前に
「苦手な人」との人間関係を楽にする仏教の教えは、 無理に相手を許したり、 ましてや好きになったりすることを目指しません。
ただ、 相手への「執着」や「期待」を、 自分の中から、 そっと手放すための技術です。
縁を切るという物理的な行動を起こす前に、 まずは自分の心の中で、 相手との精神的な繋がりを、 少しだけ緩めてみてください。
相手を変えることはできません。 しかし、 自分の心は、 いつだって自由なはずです。
その自由を、 ぜひご自身の手に取り戻してください。