皆さんの中にも、お寺巡りは好きだけれど、仏像を前にして「正直なところ違いがよくわからない…」と感じた経験があるのではないでしょうか。
「如来」や「菩薩」という言葉は聞いたことがあっても、その区別はつかない。
せっかくお寺に来たのだから、もう少し仏像について知ることができたら、もっと楽しめるはずなのに。
そんな、もどかしい思いを抱えている方にこそ、仏像の種類一覧と見分け方入門!如来や菩薩が一目でわかるこの記事はぴったりです。
仏像の基本的な種類である「如来(にょらい)」「菩薩(ぼさつ)」「明王(みょうおう)」「天(てん)」という4つのグループ分けから、それぞれの見分け方のポイントまで解説していきます。
▼この記事でわかること
- 仏像の基本的な4つのグループとその役割
- 如来と菩薩の服装や持ち物による具体的な見分け方
- 明王の怒りの表情に隠された意味
- お寺巡りがもっと楽しくなる仏像鑑賞のコツ
仏像の種類一覧と見分け方入門!4つグループと役割
仏像の世界には、実はわかりやすい序列、いわば「身分」のようなものがあります。
その役割によって、大きく4つのグループに分けられます。
この4つの関係性を知るだけで、仏像の世界がぐっと身近になりますよ。
① 悟りを開いた最高ランクの存在「如来(にょらい)」
如来は、厳しい修行の末に「悟り」を開いた、仏様の世界における最高位の存在です。「仏」や「仏陀(ぶっだ)」とも呼ばれます。
皆さんご存知の、仏教を開いたお釈迦様(釈迦如来)もこのグループ。奈良・東大寺の大仏様として有名な盧舎那仏(るしゃなぶつ)も如来の一員です。
すでに悟りを開いているため、質素な布を一枚まとっただけのシンプルな姿をしているのが特徴です。
② 私たちに一番身近な修行者「菩薩(ぼさつ)」
菩薩は、いずれ如来になることを目指して、現在も修行に励んでいる存在です。
「悟りを開く力はもうあるけれど、すべての人々を救うまでは仏になりません」と誓いを立て、私たちのすぐそばで手を差し伸べてくれる、とても慈悲深い仏様です。
有名な観音菩薩(かんのんぼさつ)や、お地蔵さんとして親しまれる地蔵菩薩(じぞうぼさつ)もこのグループ。まだ修行中の身なので、豪華なアクセサリーを身につけているのが特徴です。
③ 怒りの表情で人々を導く「明王(みょうおう)」
明王は、如来の教えに従わない、救いがたい人々を、力ずくでも正しい道へと導く役割を担っています。
そのお顔は、髪を逆立て、目を吊り上げた恐ろしい「忿怒(ふんぬ)の相」をしていますが、これは悪い心を打ち砕こうとする強い慈悲の心の表れなのです。決して、本当に怒っているわけではありません。
不動明王(ふどうみょうおう)に代表されるように、炎を背負い、武器を手にしている姿が多く見られます。
④ 仏教世界を守る神々「天(てん)」
天は、仏教とその教えを信じる人々を守るガードマンのような存在です。もともとは古代インドの神々が仏教に取り入れられたもので、非常に多彩なメンバーがいます。
興福寺の阿修羅像(あしゅらぞう)や、四天王(してんのう)のように甲冑を身につけた武将の姿から、吉祥天(きっしょうてん)のような美しい女性の姿まで、そのバリエーションは豊かです。
【実践編】服装と持ち物でわかる!如来と菩薩の見分け方
4つのグループ分けがわかったところで、次はいよいよ実践編です。
お寺で最もよく見かける「如来」と「菩薩」の具体的な見分け方を見ていきましょう。ポイントは「服装」と「持ち物」です。
如来の見分け方:質素な服装と手の形に注目
如来像を見分ける一番のポイントは、そのシンプルな姿です。
- 服装:薄い衣(ころも)を一枚、体に巻きつけているだけ。アクセサリー類は一切身につけていません。
これは、俗世への執着から解き放たれ、悟りを開いた最高位の存在であることを示しています。
- 髪型:パンチパーマのように見える、粒々とした髪型を「螺髪(らはつ)」と呼びます。これも如来の大きな特徴の一つです。
- 手の形:如来像は、手の形で何を伝えようとしているのか(印相:いんぞう)が異なります。例えば、奈良の大仏様は右手を上げて「恐れなくてよい」と安心させ、左手で「願いを叶えよう」というサインを送っています。
この3点に注目すれば、「あ、この仏像はアクセサリーをしていないから如来だな」と一目で見分けられるようになります。
菩薩の見分け方:豪華なアクセサリーが目印
一方、菩薩像は如来像とは対照的に、非常に華やかな姿をしています。
- 服装:上半身は裸で、腰に裳(も)という布を巻き、肩からは天衣(てんね)という細長い布をかけています。
- 装飾品:頭にはきらびやかな宝冠(ほうかん)を頂き、胸には瓔珞(ようらく)、腕には腕釧(わんせん)といった豪華なアクセサリーをじゃらじゃらと身につけています。
- 持ち物:蓮の花を持っていたり(観音菩薩)、錫杖(しゃくじょう)という杖を持っていたり(地蔵菩薩)と、その菩薩の性格や役割を表すアイテムを持っていることが多いのも特徴です。
「派手でゴージャスな姿をしていたら菩薩」と覚えておけば、まず間違いありません。
なぜ菩薩はあんなに派手なの?
如来が質素なのに対し、なぜ菩薩はこんなにも華やかなのでしょうか。
これには、モデルとなった人物が関係しています。菩薩のモデルは、お釈迦様が王子だった頃の姿、つまり出家する前のインドの王族の姿だといわれています。
そのため、王族らしい豪華な装いをされているのです。悟りを開く前の「修行者」であることが、その姿からも見て取れますね。
迫力満点!明王と個性豊かな天の見分け方
最後に、仏教世界を力強く支える「明王」と「天」の見分け方をご紹介します。この二つは、見た目にも個性が際立っているので、比較的見分けやすいかもしれません。
明王の見分け方:忿怒(ふんぬ)の相と持ち物
明王の最大の特徴は、なんといってもその怒りの表情「忿怒相(ふんぬそう)」です。
- 表情:髪を逆立て、眉を吊り上げ、口元からは牙がのぞいています。この恐ろしい顔で、人々の煩悩や災いを打ち払います。
- 背中:不動明王のように、背中に燃え盛る炎「迦楼羅炎(かるらえん)」を背負っていることが多く、その凄まじいパワーを感じさせます。
- 持ち物:右手には煩悩を断ち切る剣、左手には人々を救い取るための縄(羂索:けんさく)を持っているのが、不動明王の定番スタイルです。
「怖い顔で、武器を持っていたら明王」と覚えておくと良いでしょう。
天の見分け方:武将や貴婦人など多彩な姿
天は、仏教の守護神であり、そのルーツはインドの神々にあるため、非常にバリエーション豊かな姿をしています。
- 武将の姿:お寺の門の両脇で睨みをきかせている金剛力士像(仁王像)や、邪鬼を踏みつけている四天王像のように、甲冑をまとった勇ましい武将の姿。仏敵から仏教世界をガードする役割です。
- 貴婦人の姿:豊穣や幸運をもたらす吉祥天や弁財天のように、古代中国の貴婦人のような優美な姿。人々に福徳を授けます。
- 鳥や獣の姿:迦楼羅(かるら)のように鳥の姿をしたものや、様々な姿かたちがあります。
天部を見分けるには、「如来・菩薩・明王のどれにも当てはまらない、個性的な姿をしていたら天のグループ」と考えると分かりやすいかもしれません。
まとめ:仏像の種類一覧と見分け方入門!如来や菩薩が一目でわかる
これまで、仏像の基本的な4つの種類と、その見分け方についてご紹介してきました。
最初は難しく感じるかもしれませんが、まずは一番わかりやすい「服装」に注目してみてください。
- 質素な布一枚なら「如来」
- 豪華なアクセサリーを身につけていたら「菩薩」
- 怖い顔をしていたら「明王」
- それ以外で個性的な姿なら「天」
このポイントを押さえるだけで、目の前の仏像がどのグループに属するのかが、きっとわかるはずです。
仏像の種類がわかると、「この仏様は、悟りを開いた偉い方なんだな」「私たちを救うために修行してくれているんだ」と、その仏像が持つ背景やストーリーに自然と思いを馳せることができるようになります。
今までただ「仏像」として見ていた存在が、もっと身近で、それぞれに役割を持った個性的な存在として見えてくるでしょう。
ぜひ、次の休日には、この記事を片手に近くのお寺へ足を運んでみませんか。
きっと、今までとは全く違う、新しい発見と感動が皆さんを待っているはずです。